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Artist-in-Residence under the Pandemic - Remodeling Residencies_(JP)

更新日:2021年5月6日



パンデミック下のAIRと創作活動〜アーティスト・イン・レジデンスの現状と再構築〜


主催:Hosted by co・iki, AIR NETWORK JAPAN

連携協力:さっぽろ天神山アートスタジオ、なつかしい未来創造株式会社(KESEN AIR-ART-LIFE)、A.I.T.、京都芸術センター


2020年11月26日 20:00-22:30 オンライン開催

November 26th 20:00-22:30JST @Online Event



 


【前半|First Half】

co・ikiの実験リモートレジデンシー“Creativity from HOME”参加の6か国のクリエイターによるプロジェクト報告


Project Presentation by Creators of “Creativity from HOME”,2020 Experimental Remote Residency operated by Co-iki


▼公開ビデオアーカイブ Session Video Archives

▼参加クリエイター Participating Creators

“Barter: Outside our windows” Teresa Leung / Hong Kong

“Melody of Homemaker” Shen Jiaqi / Singapore

“Welcome (to my) home” Olia Fedorova / Ukraine

“(Un)forgotten flora” Francis Annagu / Nigeria

“Virtual Photography” Muhammad Rizqi Muttaqin / Indonesia

“Virtual Shared House” Copen / Japan


▼プロジェクト概要&詳細 Project Outline


実験リモートレジデンシー “Creativity from HOME” ヴァーチャル・フォトアーカイブ



 

【後半|Latter Half】

日本&各国レジデンシー運営者&クリエイターとのディスカッション

「パンデミック下のAIRと創作活動」

〜アーティスト・イン・レジデンスの現状と再構築〜


Artist-in-Residence under the Pandemic - Remodeling Residencies -

Discussion together with AIR operators and creators from Japan,Ukraine,Indonesia


▼スピーカー Speakers *Session Hosts

Yoko Negami / co・iki (Tokyo) *


Teiko Hinuma / KESEN AIR (Kesen region,Miyagi,Japan) *


Shintaro Tokairin / Arts Initiative Tokyo (Tokyo,Japan)


Mami Katsuya / Kyoto Art Center (Kyoto,Japan)


Mami Odai / AIR Director,Sapporo Tenjinyama Art Studio(Hokkaido,Japan)


Sachiko Kanno / AIR Researcher(Japan)



Olena Kasperovych / Yermilov Centre (Ukraine)


Anastasia Khlestova / 127garazh (Ukraine)



Olia Fedorova / Artist (Ukraine)


Rizki Muttaqin / Artist (Indonesia)


■Points■

  • パンデミック下でのAIRの現状共有と今後の予定(日本&ウクライナ他)

  • リモート(オンライン)レジデンシー参加クリエイターの体験談(ウクライナ、インドネシア他)

  • 《リモート(オンライン)でできること・できないこと》

  • 《今後のレジデンシーのあり方》

  • パンデミック下での世界のAIRデータ[要点共有](by Marie Chaumont from SpeakArt)

  • 参加のみなさんの現状と考え Discussion



 


日沼 Teiko@Kesen AIR:

今年の春から数回にわたり、アーティスト・イン・レジデンスの運営者と情報を共有するための、オンラインミーティングの機会を持ちました。このたびco・ikiの活動に参加する形で、いち早くオンラインでのリモートレジデンスプログラムを始めたco・ikiの活動と経験を共有させていただきたくご相談をさせていただきました。機会をいただきありがとうございます。


根上 Yoko@Co-iki

co・ikiの根上陽子です。東京で小さなレジデンシーをやっています。

このパンデミックの状況で、クリエイター達のプラットフォームであり続ける為に何ができるかと考え、2020年4月にオープンコールを出して、実験リモートレジデンシー”Creativity from HOME” (http://co-iki.org/en_US/events/creativity-from-home/) を始めました。

このセッション前半で、今回リモートレジデンシーに参加した6カ国のアーティストを紹介しました。(上記リンク参照)

各国それぞれ状況が違う中、ステイホームをしながらの場合もあれば、途中で規制が緩和され、フィジカルに自分の展覧会もやりながら、co・ikiのリモートレジデンシーにも参加というハイブリットな創作生活を送っていた人達もいます。

皆不安がある時をいかに一緒に過ごせるか、ということを一番に考えやってみたのが、今回のco・ikiの実験リモートレジデンシーです。


ここから、co・ikiの事例を少しご紹介し、お越しいただいている皆さんそれぞれの状況をシェアしていければとおもいます。

ウクライナの運営者、各国のクリエイターの方々も来ていただいているので、日本の状況はもちろん、各国の状況をシェアしながら、次に進んでいけるような会になればと思います。

本当に気兼ねなく、気になった事を話していただければと思います。



[以下、一部資料共有。参加のみなさんとのディスカッションのための問いです。記事の読者の皆さんも是非ご自身の振り返りにご参照ください。]




 


Q: COVID-19はアーティストインレジデンス構造に何をもたらしたのか?


co・ikiは、今回リモートでのチャレンジということもあり、クリエイターや参加者との関係構築のため様々なミートアップの場をつくってきました。



△ [クリエイター・ミートアップの様子 Creators Meetup]



リモートでどうやって信頼関係を築けるか、実験的にバーチャルなリビングスペースをつくる等してレジデンシーのコミュニケーションのかたちを模索したりもしました。



△ [co・ikiのヴァーチャルリビング空間 Co-iki’s Virtual Living Space created & cooperated by Marie Chaumont]



また、実験的かつフィジカルにレジデントを受け入れながら、同時期にリモートとフィジカルを掛け合わせることも試みました。リモートでやってみて、色々な気づきも得られました。




△ [ウクライナの参加クリエイターOliaによる居住地域&個展のヴァーチャルツアー Vitual Tour by Olia Fedoova]



単にフィジカルの代替ではなく、様々なアプローチがあり、その中の一つとしてリモートというかたちもあると思います。これも一つもレジデンシーというか、一つのクリエイター達の受け皿にはなっていけるのかなと感じました。


国際間での移動ができなくなったことが、みなさんにとって今回一番大きなハードルになっているかと思います。

レジデンシーにおけるエッセンスというのが何かというと、一つには、国際間の交流、文化交流・エクスチェンジが起こること。そして、人同士の新たな出会いによってインタラクションが起こっていくこと。また、それらが創作に寄与し、アーティストのキャリアを構築していくこと。改めて今回の実験で感じたことでもあります。


そこで皆さんへの問いかけでもありますが、「フィジカルな移動と国際間の移動が、国際的なレジデンシーにとってどれだけ大事な要素で、また、どんな意味を成しているか」


多分それぞれ思うことがあり、改めて見直す機会になっていると感じていますので、そのあたりもお話しできればと思います。

あとは、それぞれのレジデンスにとって何を「価値」と捉えているか

多種多様な価値がレジデンシーにはあり、そこもまたあらためて見直せる機会に今回(コロナ下で)なっていると思っています。


アーティストにとっても、フィジカルな移動、国際間の移動が彼らに何を可能にしているのか。もしくは、今回リモートでやったことで抜け落ちてしまった部分というのは何なのか。


この度、参加クリエイターへ簡単なアンケートを行いました。




Q: クリエイターにとって、フィジカルな移動をともなうことで何が可能になるのか?

―国際間のレジデンシーのエッセンスをクリエイター目線で考察する




△ [クリエイター・フィードバック(一部抜粋)Feedbacks from the participating creators ]


・効果的なフィードバックを得られる 

 クリエイターがやりたいことに対して、リアルタイムのやりとりを通して得られるフィードバックの質の担保がリモートだと難しい部分があるということだと思います。


・日常からエスケープする

リモートで、身を置いている場所や環境が変わらない状況下だったので、完全にエスケープするのは難しかったのではないかと感じました。


・クリエーションに集中できる

その場に行って身を置きながら持続的なクリエーションの時間を得られるということが、クリエイターにとっての移動を伴うレジデンシーの一つの意味ではないかと思います。


・フィジカルに出会った方が関係構築をしやすい

新たな人的ネットワークをつくる際にも、実際に会った方がリモートより容易いと感じるようです。


・いろいろな物事を細やかに洞察できる

現地で人と会った方が、ローカルのアートシーンや現場でその人が向き合っていることなどよりよく洞察できるのだとおもいます。


・実際に会った方がコミュニケーションがとりやすい

今回(co・ikiの実験リモートレジデンシー)は英語がメインのコミュニケーション言語でしたが、母国語ではない人もいて、言語的壁を感じていたとおもいます。その人にとっては尚更にリアルで会った方がコミュニケーションがしやすいこともあったと思います。感情など含めたものを伝えていくには、やはりリアルタイムなコミュニケーションが役立つのではないか、と言えます。



 


Q. co・ikiの実験リモートレジデンシーの場はあなた(クリエイター)にとってどんなものだったか?



・様々な国やバックグラウンドをもった人、クリエイターに出会えて良かった


・自身のアートプラクティス(創造的実践)を深め、また様々な手法やコラボレーションのあり方を知る機会となった


・このレジデンシーで新しい家族をみつけられた。制限のあるなかでも創作する方法を見いだせ、またその制限を”チャンス”として捉えるような気づきを得られた



リモートならではですが、普段会えないような様々なバックグラウンドの人に会えたというのは、参加したみんなが共通して言っていたことです。リモートでの可能性を感じました


この度のパンデミックがレジデンシーの構造そのものが変わってくるような一つの契機にもなるかもしれない。そんな渦中で、皆さんの現状と今後予定しているレジデンスのかたち等シェアしていけたらと思います。

また、レジデンシー活動を「サステナブルに運営できること」が一つ共有の課題にもなるのではないかとも感じています。


本日、AIRネットワークジャパンのレジデンス運営者にお集まりいただいています。

日沼さんのお声がけで今日皆さんにも来ていただきました。それぞれの活動を紹介していただければと思います。また、今回、ウクライナや他各国のアーティストや運営者も来ているのでその体験をシェアしていただければとおもいます。



日沼 Teiko@Kesen AIR


ありがとうございます。今まさに終えた

ばかりの活動紹介をしていただき、実際に取り組まれたことをお聞きしましたが、経験に勝るものは無いという、ハッときづかされる事ばかりでした。根上さんが報告と共に投げ掛けてくださった、AIRの本質とは何かということを今だからこそ問い直しながら、オンラインでもポジティブに実施できる機会を持てるということを、お話しを聴きながら改めて思いました。ありがとうございます。

ここからは時間の許す限り参加していただいている皆さんとも活動を共有していきたいと思います。


AIRネットワークジャパンで情報交換をさせていただいている各運営者の中から、アーツイニシアティヴトウキョウ、京都芸術センター、札幌の天神山アートスタジオ、それから、国際交流基金で長くアーティスト・イン・レジデンスのデータベース「AIR_J」の構築と発信をご担当され、現在はAIRの研究者の菅野さんの順番で、まずは日本の状況をお話しさせていただいて、続いてウクライナのAIR運営者の方のお話しを伺います。


まずは私の方から、AIRネットワークジャパン(以下「ANJ」)の活動を簡単に紹介させていただきます。日本のAIR運営者の方達とのフェイストゥフェイスのミーティング、研究会、勉強会を不定期に開催しております。主に、AIRに関するリサーチ、アドボカシーに関する活動、それからネットワーキング、そして、私たちの経験をそれぞれ共有、相談し合うためのアーカイブやコンサルティングも少しづつ取り組んでいます。それぞれAIRの現場を運営しているメンバーによるボランタリーな運営ですので、小さな歩みではありますが、横の繋がりへと広がってきていると思っております。私自身はこの活動の事務局を担当しておりまして、情報配信や研究会のセッティングなどをさせていただいております。また、私自身もAIRの運営をいくつか行っており、直近で行っているAIRの活動をお話しさせていただきたいと思います。


KESEN-LIFE&ARTというタイトルで日本の北東北に位置する、岩手県の沿岸地区、それから内陸部の気仙郡という広域的なエリアがあり、東北の豊かな文化を有する場所であります。もともとは、2011年に発災した東日本大震災で甚大な被害を受けた岩手県の陸前高田を中心に、2013年からAIRプログラムを実施してきました。昨年から、「気仙」という広域的な文化圏を捉えて、国際的なAIRプログラムを行なっています。今年は、日本から2名、海外から2名の計4名のアーティストで構成し、リモートで実施をスタートさせたところです。zoomを活用し、写真や映像などの様々なデータを交換しながらアーティストへのリサーチ、情報提供、コミュニケーションという形をとっています。


今回は、今年の状況をむしろ有効に使い、アーティストとコーディネーターの動き方を逆転させて、地域コーディネーターの方が主役、主導的に動いていただき、彼らの視点から、風景や、なにげない日々の暮らしの豊かさを発信してもらい、それを受け止めたアーティストが何かのかたちでクリエイションするというプロセスで進めています。例えば、毎年夏に行われる七夕祭りの取材をし、写真、映像をアーティストに共有し、その中からもう少し掘り下げたいところを再度取材してもらう。あるいは、祭りを支えている人達とオンラインでインタビューをするなどり、情報交換をしながら、何がリソースになるかを共に考えている最中です。


3月中の活動終了を目処にしながら、2月の上旬から3月にKESEN AIR KASAKOSHI というタイトルで成果発表のオンラインイベント、特設サイトを立ち上げ成果を発表する予定です。KASAKOSHIは、「笠越し」という地域の言葉で、お祭りの後の打ち上げを意味します。アーティストが実際に滞在する際には、自分の目で見で、出会った人達との関係性を深めていくことに軸を置いていましたが、今回は地域がお世話をする立場ではなく、アーティストと対等な関係で交流、共同制作することに意義があると思っています。レジデンスの意義や本質は、プログラムごとに異なると思いますが、私達が行なっているプログラムは、文化交流、地域の資源を。どのようにお互いの「良きもの」にしていけるのかを大事に捉えて活動しております。


では、続きまして、アーツイニシアティブトウキョウの東海林さんから、今の活動についてお話しいただきたいと思います。お願いします。



東海林 Shintaro@AIT


日沼さんありがとうございました。根上さん、co・ikiさん、今日はありがとうございます。前半のお話も非常に楽しく聞かせていただきました。

皆さんはじめまして、私は、アーツイニシアティヴトウキョウという東京にあるNPO団体の東海林と申します。私達はレジデンスを2003年からしています。


今年のプログラムは、海外からアーティストを招くことは、多くの団体同様になく、リモートでレジデンスをトライしてみようと思っています。2021年、1月から2月終わりまでの6週間、協働団体として、オランダのアイントホーフェンにあるバルタン・ラボラトリーズという団体と一緒に、日本人のアーティストとオランダのアーティストを1名ずつ迎え、オンラインとオフラインを掛け合わせたプログラムを行おうと思っています。

今、アーティストをまさに選考中ということで、週明けに発表させていただく大詰めのところです。プログラムに少しずつ足を踏み入れている感覚としては、まず、アーティストの公募で感じたことがあります。


オンラインとオフラインを掛け合わせることだったり、国をまだ超えることができる物流のルートを使って、物を何か交換してみるだったり、色々その手法やアイディアを加えて、プログラムを説明する公募の内容がイメージしにくかったのかもしれません。アーテイストから何回か個別に質問を受けたり、場合によっては、オンラインで補足説明をしながら、お互い話し合いました。それが、説明会のような雰囲気ではなく、お互いが持っている悩み、先ほどのco・ikiさんのお話でいうと、例えば、ある時期を一緒に過ごすというか、私達が持っているある種のチャレンジングな側面というのを、アーティストも同様に抱えていて、今、このプログラムでどう考えられるだろうか、という話にもなりました。プログラムのテーマが「リミナル・スペース」という広義に解釈できる言葉ですが、お互いのチャレンジングなものを共有する機会があって、すごく良かったなと思いました。実際に今、こうやってアプリケーションに目を通すと、自身の活動を振り返りながらも、オンラインとオフラインを掛け合わせてこういう事ができるんじゃないか、日本人のアーティスト・オランダのアーティストと、こういったことがやりたいという事を熱心に発表してくださるということに、改めて嬉しくなります。アーティストの情熱といいますか、こうした事をやりたいという気持ちに、今、勇気付けられています。


先ほどのお話を聞くと、やはり、今年のレジデンスは色々と挑戦する時期ですね。それをポジティヴに考えていきたいと思います。これは、代替という手段では無く、co・ikiさんと同じように、また違うメソッドを生み出すというように、私達にとってもアーティスト、キュレーターにとっても、参加される方に有意義なプログラムが、今後、レジデンスのDNAを受け継ぎ、継続されるのではと思っています。


最後に、もし不安に感じていることがあるとすれば、来年以降のプログラムをどのように考えていくか、です。例えば、これまで現地にリサーチに行ったり、対面した話し合いの中で関係性を作れたものが、なかなかそうもいかないとなると、新しいプログラムを新しい団体と行うことに、一つ壁が増えるのかなと。新しい団体との協働をどう生み出していくか、課題に思います。ありがとうございます。


日沼 Teiko@Kesen AIR

東海林さんありがとうございました。引き続きまして、京都芸術センターの勝冶さんお願いできますでしょうか。



勝冶 Mami@KAC


京都芸術センターの勝冶と申します。初めての方も今日たくさんいらっしゃいますと思いますので、京都芸術センターの説明から始めようと思います。


京都芸術センターは、元小学校の建物をリノベーションして活用しているアートセンターです。

建物を活用してイベントを行ったり、元教室を稽古場として貸し出して創作活動をしている場所で、その教室をアーティスト・イン・レジデンスのスタジオとしても使っています。


普段この場所をどうやって活用するというのを主に考えて活動する身とすれば、オンラインに変換せざるを得ないとなった時、なかなか頭が切り替わらないというのが正直なところです。場所を持ってはいるけども、空洞にしたまま、じゃあ、オンラインで何をするのかというのが、考えがまとまらないまま夏まできてしまいました。

それでも、こういう状況で、アーティストがこの場所に来れない中でも、どうやってアーティストインレジデンスのプログラムを作り続けていこうか、と考えた時に、今出来ることとしては、オンラインで交流したり、リサーチを続けていければなと思って、12月からオンラインのプログラムを3ヶ月ぐらい、3月末まで細く長く続ける形でプログラムをやろうとようやく決めたところです。


参加するアーティストを公募で選ぼうかという話もあったのですが、既にこのパンデミックが起こる前の時点で、今年度本当だったら来るはずだったアーティストが5組予定されていて。その方を延期にしたまま新しい人を選ぶというのがなかなか出来なくて、やっぱり本来なら来たかった人と一緒に何かやりたいという思いが強かったので、新たにオンラインプログラムの為に参加者を募集するのではなくて、本来なら来るはずだった人と今後来る時のための助走を一緒にやろうと、オンラインのリサーチプログラムを今考えているところです。

なかなか普段、京都に滞在しても、職人さんと一対一で本当に議論をし合ったりというのは出来なかったりするのですが、それがオンラインだと時間を作って通訳の方も交えてじっくり対話出来るかと思ったので、対話をメインにしたプログラムにしたいなと考えています。

オンラインのプログラム以外で情報共有としてお伝えしたいこととしては、まだパンデミックがこんなに長期化するとは思っていなかったころ来年度のアーティストを普通に募集していました。6月20日締切で募集したところ、まさかの例年以上に応募がありました。

実際に渡航して京都に来たい、ってアプリケーションを書く方が例年以上にいたというのは面白い結果だなと思っています。まだ審査中なので、プロポーザルを全部見たわけではないですが、来て制作というモチベーションは大きいんだと思います。


もう一つ、京都芸術センターでは、AIR_Jという日本全国のアーティスト・イン・レジデンスのデータベースサイトを運営しています。この運営を通して日本全国のいろんなレジデンスの募集の状況を見ているんですけど、普段だと海外の方を対象に募集するプログラムがすごく多いのですが、4月以降そういう募集が出来なくなって、その後早い段階でオンラインのレジデンスの募集が増えたり、国内のアーティストを対象にしたものが増えました。

皆さん、状況に適応した募集プログラムを色々考えられてるのだなとこのサイトを運営しながら思いました。今募集してるもので、海外のアーティストが実際に渡航するプログラムを行なっているところはほとんど無く、オンラインのプログラムの募集か、国内の居住者向けのプログラムがほとんどです。そういう変化も見られるようになってきたと思っています。私からの共有は以上です。


日沼 Teiko@Kesen AIR

勝冶さんありがとうございました。それでは続きまして、さっぽろ天神山アートスタジオ、アーティスト・イン・レジデンスプログラムディレクターの小田井さん、よろしくお願いします。小田井さんは、AIRネットワークジャパンの副代表でもあり、今年、天神山の活動を通じて全国のパンデミック下の状況に対してのAIR運営者へのサーベイもされておりましたので、多様な活動を是非ご紹介いただければと思います。お願いいたします。



小田井 Mami Odai@Sapporo Tenjinyama Art Studio


さっぽろ天神山スタジオの小田井と申します。日本の一番北の一番大きな島にあります北海道の札幌市で、元々ホテルとして使われていた建物をアーティストインレジデンスの拠点に変えたという場所をベースにして活動しています。

co・ikiさんがやってらしたオンラインのレジデンシーというのは、始まってすぐレジデンスの分野のみんなが途方に暮れる中で、本当に手探りでスーッとやり始めたという感じがあって、とても実験的にやってるということ自体に勇気をもらいながら、私達もじゃあどうするかなあというのを考える本当にいいきっかけになったと思っています。ありがとうございます。何度か、レジデンスの運営者達のミーティング、お茶会みたいなことを経て、本当に迷いながらも、今年さっぽろ天神山アートスタジオでも、昨年に引き続き国際プログラムとしてのアーティストインレジデンスはやるということを決めました。


さっぽろ天神山アートスタジオは日本のレジデンスの中でも、今年7年目のまだ若いレジデンスになります。このレジデンスが国際プログラムとしてというキャラクターが非常に強かったのを、少し変えたいなと思って、アーティストが制作に集中できる環境を提供するというところをどちらかというと強めにしたレジデンスとして運営していこうと、日本国内のアーティストの滞在というのも非常に集中的にやっているような場所です。


パンデミックの状況が起こって、海外からのアーティストが来れなくなった時に、実は、私たちのなかでは、京都芸術センターと同じように施設をなんとか使わなきゃならないというミッションになりますので、その施設利用者を減らさないという意味で、国内のアーティストへのアプローチですとか、もっと近くのローカルのアーティスト達と一緒に共同作業していくことにシフトするという動きがすぐに起こったんですね。だけれども、一方で、国際プログラムとしてのレジデンスというのも完全に無くすという選択は無かったと言えます。

それは、国境をまたいで移動してくるアーティスト達の存在っていうのが、非常にやはり私たちのレジデンスにとっては重要なものだったし、それがオンラインでやるしかないということになったとしても、とにかく休まずに継続してやろうということは決めていました。

だから今年も、全てのレジデンスのプログラム、これは、予算付きのレジデンスプログラムっていう意味なんですけど、冬の時期になってしまいました。それで、この冬に7つのアーティストインレジデンス及びアーティストインレジデンスから派生しているプログラムが同時に動く、という結果になっています。


そのうちの一つが国際プログラム、あともう一つは、札幌、北海道のローカルのアーティストを対象にしたプログラム、それと日本人のアーティストを対象にしたプログラム、というように様々なエリアからそれぞれアーティストを呼ぶということをオンラインとオフラインと掛け合わせる形で実現できたらと考えています。

ただ、今札幌もコロナのホットスポットになっておりますので、国内の移動も今後どうなるかわからない心配なところもありますけども、今の所の予定では、そういう風に進めていくつもりです。


皆さんのお話を聞いていても非常に共感する部分が多くて、例えば、AITの東海林さんがおっしゃっていたように、公募をしてみてアーティストから送られてくるプロポーザルを見ることで、私達は、こういうやり方がある、こういう情熱があるっていう、一つ一つ再確認することが出来たのは、とっても運営者として幸せだったなと思うし、やはりアーティストがいるからこそレジデンスっていうのは成立するんだなっていう当たり前のことを実感しました。


今年、オンラインでやるレジデンスプログラムは、レジデンスの非常にコアな部分に戻って、アーティストの活動を集中的にサポートする、ということだけフォーカスしています。

なので、KESEN-AIRでやろうとしているような、例えば札幌の現地にいるコーディネーターがアーティストの代わりに地域の中をスキャンしていくような構造では無くて、完全なるリモートでアーティストが自分の拠点をメインに活動し、それを我々がどれぐらい共有できるか、というのを色々なツールを使いながらやろうと思っています。


日沼 Teiko@Kesen AIR

小田井さん、ありがとうございました。アーティストがいなければ成り立たない、ということと、アプリケーションを通して大事なお手紙をいただいているような、熱い感じが伝わっってきて、現場が今まさにオンラインだけど動いているということをお伝えいただいたと思います。ありがとうございます。それでは、菅野さん、是非全国の状況、あるいは文化政策的な視点からお願いします。


菅野

こんにちは。私は、フリーランスでAIRを含めた国際文化交流と文化政策に関するリサーチャーをしていて、今現場は持っておりません。勝冶さんがご紹介してくださったAIR_Jの原型を作ってきたこと、現在も全国のAIRの調査を継続していて、日沼さんや小田井さんと一緒にAIRネットワークジャパンの運営に若干関わらせていただいています。


皆さんの話を聞いていると、アフターコロナ、ウィズコロナという時代に私達は生きていて、レジデンスの手法が、今お話していただいたように完全に変わってきている。そこで、バーチャルとフィジカルで出来ることと出来ないことを整理する必要があるではないかと思っています。今後は、そういったリサーチを行なって皆さんと共有できたらと思っています。よろしくお願いします。


日沼 Teiko@Kesen AIR

菅野さん、ありがとうございました。日本のレジデンスの状況をシェアさせていただいたので、一旦、根上さんにお返ししてウクライナ運営者の方をご紹介いただければと思います。


根上 Yoko@Co-iki

今回、各国の運営者やクリエイターも参加くださってますが、それぞれの状況も感染者数も違い、どれくらい動けるのかも異なると思います。ウクライナは1日に5万人の感染者が出ている深刻な状況にあり、それぞれ国によって状況が違うとあらためて感じています。


Anastasia アナスタシア(ウクライナ)


みなさんのお話を聞いてとてもインスピレーションが湧きました。私がいるウクライナも同じ状況で模索中です。

私は、小さいレジデンシーでキュレーターをやっています。ウクライナの東にある、2番目に大きい都市、ハルキウのレジデンシーです。この場所は「127garazh」(https://www.instagram.com/127garazh/ )という、若手アーティストにフォーカスを当てています。大きい企画を今年(2020年)の夏に企画しており、イギリスからアーティストを1名招待する予定だったのですが、パンデミックでキャンセルになりました。

その代わりに、ウクライナの若いアーティスト達とzoom交流を行いました。9月には来れるのではと思っていましたが、感染者が増え、今でもどうなるか読めない状況にあります。

結局、今年の夏の間は、ウクライナの若手アーティストを3名呼ぶことができ、オンライン、オフラインどちらもミックスして実行しました。

今の状況で何が起こるかわからない。しかも、127garazhは、その名の通りガレージで、冬は寒くて使用出来ないので、今年は、コロナと関係無くクローズしています。来年の企画はまだ決まっていませんが、オンライン&オフラインミックスの企画になると思います。

私も模索中の状況なので、皆さんのお話はとても貴重でした。他の方々がどのようなシチュエーションでどのような対応をしているのか参考にして、来年の企画も進めていきたいと思います。ただ、ウクライナのみの企画で、おそらく国外のアーティストついては、まだ控えようかなと思っています。ありがとうございました。


根上 Yoko@Co-iki

アナスタシアの127garazhは若手のアーティスト達に人気の場所のようです。co・ikiのリモートレジデンシーでもギャラリースペースのヴァーチャルツアーをしてくださいました。



Olena オレナ(ウクライナ)


私も、先ほどのアナスタシアと同じ都市でコンテンポラリーアートセンター(http://yermilovcentre.org/)のキュレーションを行なっています。ご招待ありがとうございます。皆さんのお話、文化の違い、とても参考になりました。

毎年9月に国際的なレジデンシープログラムを行なっています。このアートセンターは国立大学と同じ敷地にあり、学生、国立の植物館など様々な施設等とコラボレーションをしています。私達の国際プログラムで海外からアーティストが来る際、それらの施設を使用することができます。資料やコレクションを自由に閲覧でき、展示の場所として使用することも可能です。

今回、バーチャルという考え方になると、資料館の物はまだ全てデジタル化されていないので、資料や空間を使えないということが一番難しかったです。こちらのリンクから、私達のプログラムや施設が見れます。また、YouTube(https://youtu.be/DDVa5BldOO0)からも施設を使ったアーティストの作品を見れるので是非ご覧ください。

今年のプログラムについては、まだ模索中で、皆さんのお話や経験を参考にして考えていきたいと思っています。



根上 Yoko@Co-iki

オレナ、ありがとうございます。ちなみに、このウクライナのつながりも、co・ikiの実験リモートレジデンシーに参加したクリエイター、オリアの存在が大きく、これまで行ったミートアップの場でみんながどんどん参加してくれてできたつながりです。


アーティストの視点から、もう少し本質的なところで、国際間の移動、リモートでの連携のかたち、コラボレーションの方法等、このパンデミック下で困難になっていることをどうやって乗り越えていけるか、もう少し話せたらと思います。

オリアは、パンデミック下でリモートレジデンシーに3つ以上同時に参加していて、そのようなアーティストは実は今回世界中にいるのではないかと思っています。ヨーロッパ圏でのオンラインレジデンシーのかたちは早々に出てきていて、彼女はいくつか体験しているので、そこで感じたこと、体験したことを教えていただければと思います。



Olia オリア(ウクライナ)


私は、今年フィジカルなレジデンスを計画していろいろな国に行く予定だったのですが、キャンセルとなりとてもがっかりしています。なので今年は、色々実験しているようなかたちです。そんな中リサーチしたところ、バーチャルレジデンシーを見つけました。

デジタルメディアを扱うアーティストの友達は既に参加していたので、元々バーチャルレジデンシーの存在は知っていました。でも、デジタルメディアを使うアーティスト以外は使用していないプログラムで、私みたいなアーティストは、それまで参加しようとは思っていませんでした。

慣れない状況の中でも作品は作り続けなければいけないので、この新しい世界に慣れることを手段としてとりました。既にレジデンスが決まっていたもので、フィジカルからバーチャルに転換したものにも参加しました。現在5つのレジデンシーに参加していて、その一つにco・ikiが入っています。一つ一つのグループは、使用しているツールなど様々で全く違うものです。


先ほどco・ikiのプレゼンテーションでもあったように、オンラインレジデンシーというは、実際のレジデンシーの代用とするものではなく全く違う体験だと思います。本当に新しいものだと思っています。私にとっても様々なアーティストにとっても、自分の作品の新たな面を発見するという点では面白いと思いますし、自分の柔軟性を高める上でも役立つと思います。


今まで、これはオンラインでは出来ないと考えられた、例えば、パフォーマンスアートのレジデンシーに参加したのですが、参加した理由も、これはどうやってオンラインでやるのだろうという疑問からです。パフォーマンスアートレジデンシーに参加したことがある人に話すと、とてもショックな表情をされました。何故なら、パフォーマンスアートは、フィジカルな要素がとても強く、観客もいるからです。しかし、オンラインでレジデンシーをやって、新しい発想も生まれています。どのようにこの状況に対応しながら作品を創るかという柔軟性も必要です。また、制限がある中で、さらにクリエイティブになれたという部分もあります。


根上 Yoko@Co-iki

5つ以上のオンラインのレジデンシーをやっているパワーがすごいです。ずっとオンラインにいる時間が長くなってしまうので、少し疲れる時もあると以前話してくれましたね(笑)。

もう一人、インドネシアから参加しているクリエイターも3つ以上参加しているということで、体験をシェアしていただければと思います。


Rizki リッキー(インドネシア)


私は3つのレジデンシーに参加しました。一つ目は、日本のco・ikiで4ヶ月、主にオンラインイベントが複数あったイメージです。2つ目は、スペイン拠点のアートスペース、セルデルノルド(https://celdelnord.com/)による1週間のバーチャルレジデンシーで、毎朝毎晩ミーティングをして、その中で制作プロセスを発表するようになっていました。3つ目は、イギリスのアフターイリュージョンレジデンシー(https://www.instagram.com/afterillusion/)で、インスタグラムのアカウントのログインを貰って、インスタにアップしながら展開されるレジデンシーになります。


バーチャルレジデンシーの利点と難しさ両方あるとおもいます。言葉と声を使ったコミュニケーションが主なものなので、例えば、ボディーランゲージやその他の動きなどは感じづらく、コミュニケーションが効果的に伝わりづらい部分があります。

1週間、集中して毎朝毎晩ミーティングをする中でも、フィジカルに顔を突き合わせているわけではないので、伝達プロセスとしては(微細な部分がなくなるので)難しかったとおもいます。

つまり、一番壁だったのが、言語です。2番目は、テクニカルな問題です。

英語を主にレジデンシーで使うことになるが、言葉の意味や認識がそれぞれ違っていて、自分が伝えたいことがうまく伝わらない時、体で伝えることができない。英語でしかも口だけというのが、とても難しかったと感じました。


根上 Yoko@Co-iki

彼は20代前半で若いですが、パンデミック下でこれだけたくさんのレジデンシーにトライしているのが、私はすごいなと思います。日本人で言語が苦手だったら、知らない海外のリモートレジデンシーに行くのは、なかなか勇気がいるのではと思います。

このように、パンデミック下でもアーティストが積極的に活動している事実は、私がこの実験レジデンシーで発見したことであり、またとても勇気付けられました。

そして、様々な国のクリエイターとともに、創作を進めていく機会を作っていくことについて考えさせられました。国、文化、年齢、言語のスキルなどによって、ある意味精査されていくところもあると思うので、運営者側のみなさんもどのように考えているのかなとも思いました。


日沼 Teiko@Kesen AIR

みなさんありがとうございました。お時間も過ぎていますが、せっかくなので、他の日本の運営者の方も短くご紹介して、今日の運営者の方も何かアーティストに質問があれば是非お願いします。3331の木村さんお願いします。


木村 Mr.Kimura@3331

3331アーツ千代田という東京の中学校をリノベーションしたアートセンターで、レジデンスプログラムを10年やっています。約270名、50カ国のアーティストを受け入れてきました。

皆さんと同じで、コロナにより海外から作家が来れない状況です。また、我々と共同で行なっている東京ビエンナーレは、今年やる予定だったのですが、来年の7、8月の期間にソーシャルダイブと題して、12組の作家を海外から招聘しますが、実施できるかどうかは、来年また判断します。

コロナにおいて、我々のAIRも、東京ビエンナーレも何ができるかということを密に今作家とやりとりを行なっています。オンラインレジデンスの趣旨としては、みなさん、海外の作家と文化交流を行うために、来ていただいて地域の人と人との繋がりを大切にしたいというのはよくわかる。今、フィジカルに受け入れができる国がいくつか出て来ている中で、3331は、明後日ポーランドの大学の教授であり作家を招聘し、2週間の隔離の上、1ヶ月間プログラムを行います。かなりのリスクはあるが、この時期だからこそ来れる人を、我々がサポートしつつ、また、オンラインレジデンスとして何が出来るのかということも聞いていきたいと思っています。今日の話を聞いて、ウィズコロナとしても可能性を感じ、何が出来るのかということを考えていきたいです。ありがとうございます。


日沼 Teiko@Kesen AIR

ありがとうございました。それでは、辻さんお願いします。


根上 Yoko@Co-iki

辻さんは、co・ikiのリモートレジデンシーを応援してくださり、ボランタリーにサポートくださってました。


辻 Makiko

遊工房でレジデンシーに約5年携わり、リアルな体験が大事であるという気持ちは強いのですが、オンラインレジデンシーの実験を始めると聞いた時、やってみないとどうなるかわからないので、根上さんのやりたいという想いに、私も惹かれてついていきました。

この4ヶ月間、アーティストもオーガナイザーも実際に会うことができず、モチベーションを保つのは大変だったと思いますが、このプログラムでは、オンラインでトークセッションを頻繁に行い、関係構築もオーガナイザーである根上さんがきめ細やかにされていました。そうしたモチベーションの維持/向上と「交流の場をつくる」という意識が高かったからこそ、継続的に、クリエイターの皆さんも楽しく参加できたのだと思います。


メンバーによって、リモートレジデンシープログラムの雰囲気や内容大分変わると思います。フィジカルなAIRももちろんそうなのですが、画面上だけでのコミュニケーションなので、ログイン/アクセスされなくなってしまったら、もうどうにもならない...始める前は、もしかしたら途中でいなくなる人も出てくるのでは、解散状態になったらどうしよう、という心配もよぎりましたが体調を崩して参加できない方を除いて、皆さん、最後まで楽しそうに参加されていたのは素晴らしいと思います。クリエイターの方が、ご自身のローカルネットワークを繋げるという積極的な参加、交流があったのも、このプログラムをより勢いづけたと思います。


レジデンスの根幹でもある、緊張感と刺激を与え合い、楽しく参加し続ける「場づくり」の大切さに改めて気づかされました。

こんな赤裸々な話をしてよいのかどうか・・ただ、マイクロなレジデンシー(私設)はアーティストがいないと収入が無いものもあり、co・ikiの今回のプログラムは、無償で実施しました。今後、どのように有料プログラムにするのか、オンラインレジデンシーの価値と対価をどのように設定するのか、というのは気になったところです。


根上 Yoko@Co-iki

レジデンシーの構造、経済的にどうなっているか、皆さんそれぞれだと思うので、一つのトピックだと思いました。


日沼 Teiko@Kesen AIR

ありがとうございました。赤裸々な部分もお話いただき、色いろな部分で勇気をもらえるお話でした。次は、山口の Do a Front の蔵田さんお願いします。


蔵田 Ayako@Do a Front

Do a Front は、山口で小さなレジデンスを地域に密着して運営しています。

今年公募をかけた同じ時期に、近隣でコロナのクラスターが発生し、プログラムを実施するか再検討しました。その結果海外はインドネシアから2名をオンラインで、国内からは1名オンサイトでアーティストを受け入れて実施することにしました。

ただ、今回オンサイトで事業を行うため、滞在中にクラスターが発生しないように準備する必要があります。今日お話を聞いて思ったのですが、オンラインでレジデンスを実施するのは、人的資源とその交流が重要になってくると思うのでとても大変だと思いました。私達のレジデンスは、地域に密着していることから、できるだけオンサイトで実施することが重要だと考えました。どうぞよろしくお願いします。


日沼 Teiko@Kesen AIR

蔵田さんありがとうございます。安全、無事にプログラムが実施できることをお祈りします。結果をまたシェアしていただければと思います。では、オランダ大使館のバルクスさん、次回のPRも含めてお願いします。


ヴァルクス Bas@Dutch Embassy

オランダ大使館で文化交流を担当しているヴァルクスです。オランダ大使館は、日本でオランダのアーティストの文化交流を推進しています。

新型コロナウィルスが発生したことで、オランダからアーティストが来れなくなりましたが、オンラインの実験的なプログラムにも助成を出すことにしました。一例では、ARCUSの招聘アーティスト3人のうち一人分を、大使館が経費負担し、オンラインレジデンシーと来年のフィジカルのレジデンシーをサポートしています。

先週、ARCUSのオンラインレジデンシーに参加する、二人のアーティストと話しました。彼らは、始まって6週間経ったところで、リサーチベースでプロジェクトを行なっているということもあり、非常にポジティブな反応でした。来年はフィジカルなレジデンスがある、という約束があるから、今オンラインレジデシーのモチベーションを持ち続けられる、という彼らの発言が印象に残っています。その他、PARADISE AIRでオランダ人のアーティストと組んでオンラインレジデンスをやることになり、地域の方々とオンラインでやりとりをしながら、彼らが作ったドキュメンタリー映像とビジュアルがパラダイスで1週間展示されました。この、オンラインとフィジカルが結びつくプロジェクトにも大使館は助成しています。大使館もこの状況の中で出来ることをやろうとしています。

また、2020年12月11日、12日に、京都でアーティストインレジデンスのシンポジウムを行います。( https://www.villakujoyama.jp/air-on-air-online-symposium-2020/ )

京都芸術センター、ヴィラ九条山、ヴィラ鴨川、AIRネットワークジャパンを交え行います。近々みなさんにプレスリリースを出したいと思います。8月にAIRネットワークジャパンの会で、日本ではヨーロッパの情報を欲しいと思う方が多いと感じ、12月の会議のベースとなりました。オブザーバーには日沼さん、パネリストにドイツ、フランス、京都市の方、文化庁の朝倉さんが登場します。オランダ大使館は、文化交流、日本の文化インフラにお手伝いができればと思い、この企画を色んな文化施設と共に準備しています。


日沼 Teiko@Kesen AIR

ありがとうございました。皆さんも、12月に是非ご参加いただければと思います。今回とはまた異なるさまざまな視点からのお話を共有できると思います。


根上 Yoko@Co-iki

次は、まりえさんお願いします。彼女は、カナダでSpeakArtというレジデンシー情報のプラットフォームを運営しています。


ショモン Marie@SpeakArt

時差の関係で途中参加です。今日は、パンデミックの中でレジデンシーがどのような運営をしているか、どのような葛藤があるかなど聞かせていただき、とても勉強になりました。

私は、助成金が出る、または、参加無料のレジデンシーの公募を掲載しているウェブサイトSpeakArt ( http://speakart.info/ ) を運営しています。

北米では、3月16日頃から本格的にロックダウンが始まり、それから4月頃にオンラインレジデンシーの公募がヨーロッパで始まりました。アメリカは特に感染者が多く、通常のレジデンシーは完全に運営がストップした状態でした。

パンデミックの影響で、今年のレジデンシーのオープンコールは少なくなるかなと思っていましたが、現時点で去年と比べて数があまり変わっていません。去年は262件のオープンコールを掲載しましたが、今年は現段階時点で227件です。一番の違いは、227件のうち、37件オンラインレジデンシーのプログラムが増加したことです。


根上 Yoko@Co-iki

リサーチャーならではのお話ありがとうございます。まりえさんにはco・ikiでの通訳、バーチャルスペースを作る実験など、快く協働いただき、サポートしてくださいました。心からの感謝をこの場でお伝えします。


日沼 Teiko@Kesen AIR

みなさん長時間ありがとうございました。こうして運営者の方々のご努力を知り、少しづつ経験をみなさんと共有出来るようになったことが非常に心強く、嬉しく思いました。。アーティストはフレキシブルに、クリエイティブな力で乗り越えていくたくましさがあり、共同で一緒に取り組めることがまだまだたくさんあるということも感じました。今回、co・ikiのプロジェクトに参加させていただきましたこと、改めてお礼申し上げます。


根上 Yoko@Co-iki

ご参加のみなさんありがとうございます。もっとお互いに話したいこと、聞きたいことなどあると思いますので、また次の機会を持てたらと思います。そして通訳のサラさん、長時間ありがとうございます。



 

まとめ(日沼)


AIRの定義について考えると、<artist mobility=移動を伴う創作活動>という要素は非常に重要です。しかし、コロナ禍で人の移動が制限され、2020年以後のAIRをめぐる環境は大きく変わりました。肉体が移動できないことの代用として、世界中でICTを活用したリモートAIRが行われ始める中、co・ikiは、いち早く実験リモートレジデンシー”Creativity from HOME”に取り組まれ、この度、その成果報告に参加させていただき、改めてアーティスト、主催者ともに、柔軟な発想、ポジティブな思考で実施されたことに大変関心し、同じくAIRを運営する団体にとっても、大変勇気付けられるプロジェクトであったと思います。


アーティストの活動報告、アンケートからは、コミュニケーション、クリエーション、プラクティスにおいて、フィジカル、リモートともに強みと課題が読み取れましたが、どのような形であってもポジティブな発見、取り組みがあり、ヴァーチャルならではの実験や観察、また、5つものAIRに平行して参加していたという強者のアーティストもおり、その逞しさには驚かされました。一方で、運営者の視点では、いかにしてクリエーション、コミュニケーションを閉じない環境をつくることができるか、相互の信頼を保つことができるのかを考え、その結果としてオンラインAIRというバーチャルなプラットフォームを用意し、それらの成果の公開、アーカイブの新たな手法として捉えていることがわかりました。


このセッションの後、この報告をまとめている現在(2021年4月当初)では、自身の運営するAIRを含めて、さまざまなオンラインの取り組みに参加、ケーススタディをさせていただく機会を得ました。もちろんフィジカルな経験ができる機会を待ち望む声は大きいものでしたが、フィジカルとオンラインのAIRは「全く違う性質のもの」としての、これからのひとつの選択肢として今後も積極的に活用していきたいという意見も数多く聞くことができました。もちろん、ここでは登場してこない、さまざまな課題や、失敗、挫折の存在があることも忘れてはならないと思います。いずれ、そうしたことからの学び、エッセンスを抽出する機会も持ちたいと思います。


時空を超える力として人間の想像力があり、活動できる「プラットフォーム」があれば、AIRという「泉」は涸れることはない。そうした希望を強く持ち続けたいと思わせてくれたセッションでした。ご参加、ご協力いただいたみなさまに感謝を申し上げます。


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